災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

まとめ・報告

公開日
2020年9月9日
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2014.1.16 「3.11を振り返る」⑦
自分たちが雰囲気をつくれば、それが伝わっていく
NPO法人宮城県レクリエーション協会事務局長 山内直子


震災から3週間後、私はレクリエーションの仲間と東北福祉大学がコーディネートするボランティアのバスに乗って石巻市へ向かいました。レクによる支援活動を始めたいと考えていましたが、勝手に被災地に入ることも難しいため、一般のボランティア活動に参加して、被災地の状況とニーズを把握しようと思ったのです。また、「何かしないといけない」という個人的な想いもありました。

石巻市では、主に津波の被害にあった民家の片付けを手伝いました。泥をかき出し、家具などを運び出したり、捨てる物と残す物を分ける作業をします。家主の方に「これはどうですか」と話しかけることも多く、そこでのコミュニケーションはとても大切でした。作業が「つらい」ではなく、むしろ楽しみながらできるように。かといって大声で笑うといった過度な態度ではなく、被災者のみなさんと接します。そうして関係性が良くなると、作業もしやすくなり、安心してコミュニケーションがとれるようになると、被災当時のことを話してくれたり、被災者の方も気持ちが落ち着いていきました。

そんな雰囲気ができると、物資を配布しに回っているボランティアも、大きな家具を運び出すのを手伝ってくれたり、関わってくれる人が増えました。自分たちが雰囲気をつくれば、それが伝わっていくのです。それには、普段のレク活動でのコミュニケーション・ワーク、相手を思いやる気持ちや、相手の出方を待った方がいい時には受け止めるといった姿勢がとても生きました。また、このような関係が築かれれば、どんなレク支援も受け止めてもらえると実感し、改めて、レク支援の内容や技術よりも前に、相手との関係性・信頼関係をつくることの必要性を学びました。

石巻市に通う中で、災害ボランティアセンターである石巻市社会福祉協議会の担当者ともお話をする機会がありました。「レク支援のニーズはある」というお話が聞け、その当時、牡鹿半島の先端にある鮎川という地域に支援の手が伸びないということもわかりました。同じ頃、震災前に県教育事務所の「健康まつり」などで関わりのあった方が女川町に赴任しており、「今がレク協会の出番」という連絡をくれ、宮城県レク協会の支援活動は、そこから始まっていきました。

最初に行ったのは、鮎川地域の避難所となっている福祉センターでした。運営する社協の職員も家が流され、避難しながらなので、みなさんが疲れた表情。それでも、「ここにいる人のために、お願いします」と迎えてくれました。しかし、この日は自衛隊の音楽隊の慰問も入ってきてしまいました。担当者も「申し訳ない」という表情です。「無理してやらなくても」と言う同行したスタッフもいましたが、避難所には子どもたち、高齢者、障がいを持つ方も多く、音楽隊の演奏を聴くだけでなく、そのあと、一緒に身体を動かしたり、声を出したりすることも必要と感じ、活動を行うことにしました。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告(1-1)

支援物資が並ぶ施設のロビーを少し片づけ、椅子を出させてもらい、道具を使わないゲームや手遊びなどから始めていきました。ロビーに響く笑い声などに誘われて、参加者が増えていきます。その度、ロビーの荷物を片づけて椅子を置いていきました。ある程度、参加者が集まったところで、みなさんと言葉でやりとりする時間も入れました。その時はクイズのような形で、スタッフにお国言葉を話してもらい、出身地を当ててもらいました。避難所のような緊張感のある場所では、石巻市でのボランティア活動と同様、スタッフとの関係づくりがあった方がみなさんも安心しますし、ちょっとした会話ややりとりがあることで、雰囲気が一層良くなります。時には、避難所を運営する職員にも入ってもらい、レクを通して距離感を縮めてもらうようなこともしました。

普段のレク活動とは異なり、避難所では、「さあ始めましょう」というふうにはいきません(放送でアナウンスをしてくれる避難所もありましたが)。女川町の避難所となった総合体育館には800人を超える方が避難をしており、段ボールで仕切られたスペースをまわって声もかけましたが、それも限界がありました。レク支援の活動ができるのは玄関のスペースで、私たちは大きな音ではないですが、音楽を流させてもらい、気づいてくれた方と活動を始めていきました。やはり、笑い声や楽しそうに身体を動かす姿がいちばんの広報になり、だんだんと参加者が集まってきます。ここでも、自分たちで雰囲気をつくっていき、それを広げていくことが有効な方法と感じました。活動に加わらないものの、まわりから微笑みながら見てる方もいます。私はそれも一つの参加の仕方だと思っています。笑顔を交わし合うだけでもいいですし、見守ってくれる方がいることで、避難所の中にとても温かい空間ができるのです。
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告(2-1)

こうした避難所での支援活動をきっかけとして、宮城県レク協会では、女川町の子どもたちをキャンプに連れていったり、その後の各地での仮設住宅での支援活動へとつながっていきました。女川町社会福祉協議会とは支援協定を結び、高齢者の健康づくりを中心とした支援活動や、この秋にはスポーツ・レクリエーション祭も開催。また、女川町と東松島市では、被災者の中にレク支援のリーダーを養成するためのレク・インストラクター養成も行うことができました。

私自身にとっても支援活動は、支援のあり方や方法など、たくさんのことを学ぶ機会であり、大きな意味がありました。特に昨年は私事でも悲しい出来事がありました。気持ちが沈んでいる時でも、「支援活動があるから」と被災地に伺うことで、被災者のみなさんと接し、時には料理を作ってくれてご馳走になったりすることで、逆に元気をもらって帰ってこれたように思います。レク支援の活動があったから、昨年一年乗り切れた。そうしたことからも、この支援活動と被災者のみなさんに感謝しています。
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