災害時のレクリエーション支援
 レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ  まとめ・報告
レクリエーション・ボランティアに関するノウハウ 

まとめ・報告

公開日
2020年9月2日
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2013.3.9 心配される福島県の子どもたちの体力低下
福島市で子どもたちの支援を考えるシンポジウム開催


東日本大震災の発生から2年を迎える3月9日、公益財団法人日本レクリエーション協会は福島市にて、子どもたちの成長を促すあそびの支援方策について考えるシンポジウムを開催しました。
震災直後、放射線の影響で外遊びが制限され、線量が下がり、学校や公園等の除染作業が行われた現在も、子どもたちの外遊びを制限する保護者が少なくないことが調査等でも把握されています。こうした状況の中で、子どもの運動能力の向上と心の安定を、どのように支援していくのかを考えるシンポジウムです。

午前中は遊びのワークショップが行われました。室内という限られた空間で行うことができる心身に効果的な「遊び」の紹介です。
前半は、レクリエーション・コーディネーターの有本征世さんです。有本さんは、ご自身が考案した運動あそびのセット「忍者ランド」を被災県のレクリエーション協会や自治体に寄付し、福島市の幼稚園等での支援活動にも参加してきました。
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風呂敷をボールがわりにして投げ合ったり、2人組みでジャグリングをしたり、いろいろな遊びを見せていきます。「忍者ランド」の紹介では、トンネルやクモの巣渡りなど、それぞれの遊びを大人にも手伝ってもらいながら子どもたちに紹介していきました。
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子どもたちは体育館に広げられた遊びのサーキットを走り回ります。楽しいと、こんなにも子どもたちは走り回り、動き続けるんだと、改めて実感させてくれました。
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後半はやはりレク・コーディネーターで、熊本YMCAの久保誠治さんです。久保さんは、被災のすごかった宮城県東松島市野蒜小学校で支援活動を行ったほか、その後の九州北部豪雨災害で子どもたちのキャンプなどを実施してきました。
「指の体操」と言いながら回りの人とふれ合ったり、みんなで音楽に合わせて踊る体操やゲームから始まり、いつのまにか大人も子どもも一緒に遊んでいます。
そしてメインのプログラムへ。まず、新聞紙を思い思いの場所で広げ、自分の雲をつくります。大人がセロハンテープを切り、子どもが新聞紙をつなげていきます。単純な作業ですがみんなむ夢中になっていました。
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それをつなげていくと、大きな雲が体育館に広がります。「雲の下をくぐろう」という久保さんの合図で、子どもたちは大はしゃぎで新聞紙の下にもぐり込みました。その後も新聞をグシャグシャに集めたり、それをビニール袋に入れて、ボールのようにして遊びます。
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「これは砂場遊びと近い感覚の遊びなんです」と久保さん。子どもたちも久しぶりの感覚に大喜び。遊びにのめり込む姿を見せてくれました。
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午後は中村和彦さん(山梨大学大学院 教育学研究科教授)、井上孝之さん(岩手県立大学 社会福祉学部准教授)をパネリストに迎えてのシンポジウムです。
中村先生は、文部科学省が行った全国の小・中学校の体力テストの結果を示しながら、現在の福島県の子どもたちの現状を解説してくれました。それによると、震災2年後に行った体力テストの結果、福島県の子どもたちの体力が全国平均を下回っていることがわかりました。体力テストは50m走や20mシャトルラン、ソフトボール投げ、反復横とびなどの8つの項目で測定されますが、その全てで下回ってしまいました。一方で、体重は全国の平均値を上回っています。これまでの経年変化とくらべても、「この2年の間に今までに経験したことがないくらいの落ち込み」ということでした。
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シンポジウムでは、「ここからどうやって体力や運動能力を向上させるか。どうやって、子どもたちの元気を回復するか」が話し合われました。
中村先生は、「スポーツをしていれば運動しているからいいだろうって考え方は違う。幼稚園・保育園や小学校のうちは、人間の基本的な動きを身につける期間。体の決まった部分を集中して動かすスポーツではなく、いろいろな動きを身につけられる経験をした方がいい」とし、そのためには、「おもしろいから、のめりこむ」という“あそび”を子どもたちに提供し、その結果、運動量も増えるという状況をつくることが大切と話しました。
そして、“おもしろいから、のめりこむ”という状態をつくるための6つの条件として、①いろいろな動きが入っている、②みんなと同じ動きをする、③競い合うこと、④コツがわかってくる、⑤体の動かし方がわかってくる、⑥いつもと違った感覚-を挙げました。
井上先生は、「遊びにおいて、子どもたちがレジリエンス(困難な状況でも、しなやかに適応して生きる力)をつけるための環境をつくることも大切」といい、そのためには、①安心する状況をつくる、②周りが関与する、③話を聞く(傾聴)、④絆をつくる、⑤自分への信頼感(自己効力感)を高めてあげる-といったことが必要なことを提起しました。また震災後、福島県内では子どもたちに対していろいろな工夫や試みがされており、「そうしたことを共有する機会をもっとつくるべき」と提案しました。
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