「5歩あるけば家の中どこでもいける」と表現されるように、仮設住宅は狭く、災害前の暮らしと比べると生活の中での運動量がとても少なくなります。隣近所への配慮からテレビの音や話し声、笑い声にも気を使い、いろいろな地区の人が集まるなかで新たな近所づきあいも始まります。そうした生活環境が長引くにつれて身体機能が低下し、ストレス等から認知症のリスクも高くなります。
仮設住宅でのレクリエーション支援の役割は、まず身体を動かすことと、交流の機会を継続して提供することです。しかし、単に健康体操や筋トレ的なアクティビティをする支援活動には参加者は集まらなくなります。大きな声を出すことができ、楽しさや笑いのあるプログラム。そして、そうした活動で参加者同士が打ち解け、いろいろな会話・コミュニケーションを楽しめることが大切です。避難所から仮設住宅に移ったとはいえ、被災した時の気持ちや生活への不安などをまだまだ吐き出していない被災者も多く、身体を動かすと同時に、少しでも気持ちが晴れる機会が喜ばれます。
東日本大震災の支援活動でよく行われていたプログラムは、普段、介護予防活動などで行われているものと変わりありません。最初の30分程度、ストレッチや手指の運動、脳トレの要素も入れたゲームなどでウォーミングアップをします。そして、30分程度、歌に合わせた体操やボールなどを使った運動を行い、休憩を挟んで最後の30分から45分間、交流を深めるためのグループゲームなどをします。その際にいくつかのポイントがありました。
1.参加者のペースに合わせ、いろいろな言葉かけをする
体操やゲームなど、参加者の様子にペースを合せます。基本的に、いろいろな会話を入れながら、ゆったりと進める方が良いでしょう。回数を重ねてくると、段々に運動能力がアップし、ペースを速くする必要があるかもしれません。また、何気ない日常の話題など、コミュニケーションの機会を増やし、参加者が言葉を発しやすい雰囲気をつくります。
2.仮設住宅に備えられている物を使う
折りたたみ椅子や机、座布団、タオル、新聞紙など、仮設住宅に備わっている物をつかった運動・ゲームなどを行います。すると、住民のみなさんが自主的に身体を動かすことを促すきっかけになります。
3.ゲームや楽しみ方をアレンジ
ニュースポーツなどレク用具を使ったゲームは、とても参加者を惹きつけます。しかし、狭い集会所や談話室で楽しめるように、遊び方、ルールなどを工夫する柔軟さがいつも必要です。
こうした支援活動は、月に1回でも有効で、継続することが高齢者の社会性の維持にもつながります。週に1回程度実施できると、参加する高齢者の雰囲気が明るくなったり、行動的になったり、カゼをひかなくなったりと変化や効果を見ることができます。高齢者のちょっとした変化に気づくようになり、認知症の兆候に気づき、早期予防につながったケースもありました。