避難所では座りっぱなしの生活が長くなり、仕事や家事などの役割がなくなることで、特に高齢者の生活機能が低下し、生活不活発病を招きやすくなります。そのため、身体を動かすために毎朝ラジオ体操に取り組んでいるところも多く見られました。しかし、「生活不活発病を防ぐために運動しましょう」と呼びかけるだけでは、なかなか人は集まりません。
災害直後の避難所では、「みんなで楽しみましょう」ということは言いだしにくいのですが、「あそこで何か楽しんでいるな」というところに人が集まりますし、「みんなで一緒に過ごしましょう」というなかに体操が入ってくる、歌が入ってくる、そういう仕掛けをつくることが大切で、そこにレクリエーションが生きると言われています。そうして身体を動かしたり、声を出すことは、心が落ち着いたり、気持ちが晴れる効果もあるほか、参加している人だけでなく、まわりで見ている人たちの気持ちや避難所の雰囲気を和らげる効果もありました。
避難所での支援活動では、次のようなアプローチが有効でした。
1.コミュニケーションから身体活動へ
災害直後の避難所では、被災者の話に耳を傾けたり、お茶のみの準備をしてコミュニケーションをとるところから活動を始めていました。それは、避難所の人たちに認知をしてもらう過程でもあります。そうした中で、身体をさすったり、ストレッチなどをしながら、徐々に一緒に身体を動かしていきます。
2.30分程度のストレッチや体操を準備
避難生活では筋力が落ちないようにするために、30分程度の運動を週2、3回は行ったほうが良いといわれています。支援活動を行うために、簡単なストレッチや体操を準備しておきます。行う時は、単に号令に合わせてではなく、被災者のペースに合わせ、動作の意図を説明したり、感想を聞いたり、ゆったりと進めます。
3.レク・ゲームが役立つ
避難所ではスペースも限られるため、道具などがなくてもできるレク・ゲームがとても役立ちます。みんなで一緒に声を出したり、多少のふれあいのあるゲームは、ストレスを緩和する効果もあります。また、子どもや高齢者、障がい者など、いろいろな人たちが一緒にできることも大切です。
4.歌、音楽にあわせた活動
よく知られている歌謡曲、地域にまつわる歌、朝ドラの主題歌などに合わせた体操やゲームも有効でした。「久しぶりに大きな声を出せてスッキリした」。避難所の生活では、声を出す機会を提供することも大切で、まわりで見ている人たちにとっても、声を出す機会になります。
避難所にはいろいろなボランティアが訪れます。その中には健康づくりや芸能などを行う活動も多いのですが、例えば、歌や音楽も聴くだけという受け身的なものが多く、レク支援の良さは被災者が参加でき、身体を動かし、声を出せるところにあります。支援をする時は、「身体を動かさないと筋肉が衰える」といった一方的な心配ではなく、被災者の気持ちを受け入れようとする姿勢が大切です。また、時には「あなたたちは帰るところがあっていいね」といった言葉も受け止めなくてはなりません。学生等の若いスタッフが支援に同行する場合は、そうした際のストレスケアにも配慮しましょう。