3月8日、宮城県レクリエーション協会は、これまでの震災支援活動の成果をまとめ、レクリエーション支援にかかわるボランティアや関係者の今後の活動を促進するための「災害支援レクリエーションフォーラム」を開催しました。
この中で、東北福祉大学教授で医師の船渡忠男先生が「医学的視点から捉えた災害地におけるレクリエーション支援の効果的特性」というテーマで講演しました。同大学予防福祉健康増進推進室で実施してきた、高齢者施設・地域での“健康づくり”の試みや、震災後の“防災士”養成の取り組みなどからレク支援の必要性を捉えなおしたものです。 船渡先生によると、災害時のレクリエーション支援は、身体的効果、精神的効果、社会的効果の3つの効果が期待できるといいます。
まず災害直後の避難所においては、座りっぱなしの生活になったり、仕事・家事などの役割がなくなることにより、特に高齢者の生活機能が低下し“生活不活発病”を招きやすくなります。そのため、できるだけ早い時期からレク支援によって具体的な身体活動を提供することが生活機能低下の改善につながるそうなのです。
さらに被災地の健康問題は心の問題であることが多いのですが、こうした精神的な面にも「レク支援による運動や交流が役立つ」と、船渡先生。それは運動することにより、交感神経が活性化され、心拍数が上昇。血流が良くなることで気持ちも良くなり、意欲的にもなっていくからだそうです。
また運動は、気分を良くするベータ・エンドルフィン、高揚感をもたらすドーパミン、心を安定させるセロトニンの順番で脳内物質が増えていくため、この順番にそった運動プログラムの提供が効果的とアドバイスします。例えば、最初はストレッチなどでゆっくりと気持ち良さを感じ、その後、身体に負荷をかける体操やウォーキングへ、そして最後はクールダウンといった順番。これらをみんなと行うことによってコミュニケーションや楽しさが生まれ、運動が促進・継続されることにレク支援の良さがあるそうです。
地域で行ってきた健康づくり教室においても、みんなで何かをすることは、「心が健康になった」という意識にも反映されやすく、わずかな効果でもこうした機会を重ねていくことが、身体の健康に還っていくといいます。
船渡先生はさらに、レク支援によるプログラムをみんなで楽しむと、生活のハリ・意欲・リラックスといった精神的な効果が高まり、避難所や仮設住宅での対人関係が良くなってグループ意識が育まれ、新しい人間関係による互助の力が引き出されることにも注目。「地域コミュニティを造ることが、レク支援の最終的な目的」と、災害時のレク支援の意義をまとめました。そして東北以外の地域においても、災害時の支援の中に、発災直後の生活活発化の早期介入と、長期化する仮設住宅での運動支援・心のケアに対するレク支援を位置づけ、そのための支援チームづくりや、具体的なプログラムを準備することを提唱しました。