宮城県の内陸、大崎地域東部に位置する美里町。2003年に宮城県北部連続地震で被災したこの地域は、東日本大震災とその一ヶ月後の大きな余震により、3886棟の家屋が全半壊するなど、再び大きな被害を受けました。しかし、今回の震災では内陸部のこうした被害はあまり知られていません。
町外のボランティアによる支援活動がほとんど見込めない中で、美里町社会福祉協議会はおよそ50世帯が暮らす中埣仮設団地でのサロン活動(すまいるサロン)を続けています。毎週月曜日に行う活動は、レクリエーションの公認指導者資格を持つ職員が主に担当するほか、月に2回、地元のおおさきレク協会が活動を支援しています。
9月9日(月)は、おおさきレク協会の五十嵐恵美さんと手島牧世さんがサロン活動をリードしました。この日の参加者は2人。参加者が少ない時もありますが、「待っている人がいると思うと、行かなくっちゃと思うんです」と五十嵐さん。同社協の浅野恵美さん、志子田恵さん(お二人とも公認指導者)も手伝ってくれました。
この日のメインのアクティビティは「パラソルシュート」。開いた傘を逆さに置き、そこに手作りの輪を投げる、宮城県レク協会の考案した軽スポーツです。傘に入った時、柄や骨に引っかかった時、それぞれの点数や投げる位置をみなさんと決めてゲームが始まりました。最初は利き手で、次に反対の手で投げます。手作りの輪は形も不均等のため、意外と投げづらく、自然と指先にまで神経を使います。
「左手はよその人の手のようだ」と言いながらも集中するみなさん。投げる手を変えた時、「足はどっちが前だった?」と確かめると、「前足を出して」、とユーモアたっぷりの答えも返ってきます。ゲームが進むにつれ、身体の動きも大きく、歓声も大きくなっていきました。
参加者も一緒にルールを作ったり、楽しみながらも普段あまり使わない身体の部分を動かすなど、おおさきレク協会のみなさんのリードにはいろいろな工夫があります。身体機能が落ちてきた参加者がいる場合は、ゲームのチーム名を決める時に季節の花や食べ物を話題に出しながら回想法的なアプローチをしたり、得点の計算、勝負がつくごとに大きな声と動作でバンザイをするなど、介護予防のための工夫をしています。
こうした支援活動も新たな局面を迎えようとしています。公営住宅の設置が進み、仮設住宅からの転居も始まりました。手島さんは、「次の段階に進んだと思われるかもしれませんが、まだまだ気持ちに寄り添う支援が必要」といいます。確かに、被災地では被災時の苦労や自宅が流されたり、壊れた時の話を残念そうに話す方も少なくなく、未だに失った震災前の生活が、心に残ってしまっていることに気づきます。浅野さんも、「先のことがなかなか見通せない避難生活では、信頼関係を築きながら小さな楽しさをいくつも積み重ねていくことが大事」といい、「その人を受け止め、得意なことや良い面があれば、スポットを当てる支援が必要」と感じています。
そして、「公営住宅に移った後も、すまいるサロンのように、身体を動かし、おしゃべりや交流を楽しむ場を地域住民と共につくっていくことがますます必要」とみなさん話してくれました。