福島市レクリエーション協会が今年2月から支援活動を行っている二本松市の安達町運動場応急仮設住宅。ここで行う歌のプログラムはとても好評で、毎回30人から40人の住民のみなさんで集会所がいっぱいになっています。
9月12日(水)、プログラムを始める30分前くらいから住民のみなさんが集まり始めました。スタッフの石渡弘美さんたちが準備するお茶やコーヒーの香りが、集会所をリラックスした雰囲気にしているのか、自然とおしゃべりが始まります。知り合いが来ると「席とっておいたよ」と声をかける人。「ここに来れば、名前はわからなくても顔見知りになれるから」と話す方もおり、こうした活動が人と人のつながりをつくっていることもわかります。
この日は「里の秋」など秋の歌やみなさんの好きな流行歌などを、蒲倉一男さんのピアノの伴奏と佐藤千鶴さんの歌詞のリードに合わせて歌いました。途中、簡単なわらべ歌に合わせて、左右の手で合計五本の指が立つように組み合わせていく〝頭の体操〟のような指遊びや、「山田のかかし」の歌詞を「の」を言わないで歌ったりします。間違いが起こるたびにみなさんの笑い声が響きました。
「間違ってくれる方がいるから楽しくなるんですよね」とプログラムを進行する鈴木道代さんが言うと、「間違って正解ですよね」と参加者のみなさん。鈴木さんは「住民のみなさんがうち解けやすいように」とゲーム的なことをプログラムに入れているそうです。
月光仮面の歌では、腕や肩を回したり、体をひねる動作がつけられました。毎回、歌に合わせて身体を動かすことも行います。リズムに合わせて手を叩いたり、隣の人と手を合わせたりした時は、その動きが盆踊りを連想させ、休憩時間にスタッフの古川丈子さんがみなさんから盆踊りを習う場面もありました。
みなさんに歌いたい曲を聞くと、「高原列車は行く」がリクエストされました。歌い終わった後、スタッフの金沢次郎さんが「高原列車に乗ったことがある方いますか?」と尋ねます。この歌は、会津地方を実際に走っていたローカル線が題材になっているとのことで、福島県内の歌のことや住民のみなさんが住んでいた浪江町の駅にも歌の碑があったこと、震災後に会津地方に避難したことなど、色々な話や思い出に花が咲きました。
2時間ほどのプログラムでしたが、楽しんだ歌は16曲。「もみじ」では2つのパートに分かれて輪唱をするなど、みなさんの歌声、ハーモニーが仮設住宅に響いていました。参加したみなさんも、「けっこう汗が出たね」、「笑えてうれしい」、「気持ち良かった」とスタッフに話しかけます。「隣に聞こえるから大きな声は出せない」、「一人暮らしなので、家にいるとずっと黙っている」など、周りに気を遣うことで、世帯分離が増えた仮設住宅では、歌のプログラムで声を出し、身体を動かし、笑ったりいろいろな話をする機会がとても大事になっています。