災害時のレクリエーション支援
 Recrew No.629(2012年3月1日)発行 [笑顔 Again]プロジェクト Vol.09
Recrew No.629(2012年3月1日)発行

[笑顔 Again]プロジェクト Vol.09

公開日
2020年7月2日
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被災地に笑顔をとどけるTeam Recrew
生活を取り戻すための
レクリエーション支援


被災者に寄り添う支援活動をめざして おおさきレクリエーション協会

宮城県北東部の内陸に位置する美里町では、東日本大震災により741棟の家屋が全壊または半壊しました。こうした大きな被害を受けているにもかかわらず、沿岸部の津波や原発事故による甚大な被害の陰に隠れてしまい、美里町の被害はあまり知られていません。現在、美里町には応急仮設住宅が町内2カ所(計64戸)に設置され、被災された方々の生活再建に向けた歩みが始まっています。
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仮設住宅の一つである中埣(なかぞね)団地では、美里町社会福祉協議会が住民の交流促進や孤立化を防ぐために「すまいるサロン」を毎週月曜日の午前中に開催しています。サロンでは、身体を動かすことや染め物、お菓子作りなど、いろいろな活動を行ってきました。月に一回、仙台大学(レクリエーション資格の課程認定校)が健康体操の指導に来たり、住民の方が得意な手芸をみんなで楽しんだり、漬け物や作った野菜もサロンに持ち込まれます。「社協だけでなく、ボランティア、住民、みんなで取り組むサロンです」と運営にかかわる浅野恵美さん(社協職員であり、おおさきレクリエーション協会事務局長)は話してくれました。

学校の振替休日で子どもたちがいるときは、子どもたちと一緒にホットケーキを作り、サロンに来ていない住民にも配りました。「子どもたちと仮設住宅を回ることで、コミュニケーションが取りやすくなります」と浅野さん。ボランティアや住民の得意なことを活動に入れたり、子どもたちとの交流も取り入れたりしながら、サロンがいろいろな人と人のつながりを創る場にしようとしています。
おおさきレクリエーション協会も、このサロンの運営を9月から手伝っています。「最初にお茶のみをしながら近況報告をして、手のマッサージや体ほぐしをします。そして、『今日はこれ持ってきたけど…』と新しい活動を紹介したりします」と中心となって活動する五十嵐恵美さん。「仮設住宅では動く範囲も限られて運動不足になる」といった声を受けて、ディスコンやバッゴーといった身体を動かす遊びを取り入れています。また、子どもたちが参加するときは、大きなトランプを使ったり、グループゲームをしたりして交流を深めています。参加者から「やってみたら楽しかった」、「時間って、あっという間ね」といった声を聞くたびに、「こうしたサロンで過ごす時間が必要だと感じる」と五十嵐さんは話してくれました。
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12月16日は中埣団地の忘年会でした。「同じ団地に住んでいても、まだわからない人もいる」ということから、住民の発案で企画されました。日程や会費を決めて、募集をする。こうした開催までの段取りや実務を住民の皆さんが担い、社協とレク協会は当日の手伝いをします。住民の方々は、いずれ自宅のあった地域に戻る、あるいは新しい地域に入っていかなくてはなりません。そのときの対応力をつけてもらうためにも、「住んでいる人の力を引き出すための支援」が大切だといいます。
この日、おおさきレク協会のメンバーは会場作りを手伝ったり、子どもたちにも参加してもらえるよう、忘年会前にパネルシアターや絵本の読み聞かせを行ったりしました。
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また、忘年会の中でも、「上を向いて歩こう」など、みんなで歌える歌をリードして、住民が打ち解けやすい雰囲気作りをしました。 
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住民の得意なことをサロン活動に積極的に取り入れ、住民の交流の機会を一緒に作り、支える。おおさきレク協会は、「住民が生活を豊かにする環境作りをする」という考え方で支援に取り組んでいます。それは、時には裏方的で、直接的なレクリエーション提供ではなくなります。しかし、こうした住民に寄り添う支援の形は、これからの被災地での支援活動の方向を示しているのではないでしょうか。

一つずつ「日常」を取り戻すために 盛岡市レクリエーション協会

井上ひさしさんの『ひょっこりひょうたん島』のモデルとなった蓬莱島や、『吉里吉里人』と同名の吉里吉里という地名のある岩手県大槌町。風光明媚な港町でしたが、その他の東北沿岸と同様に震災と津波で大きな被害を受け、建物の上に遊覧船が丸ごと載っかっているというショッキングな映像で有名になった所でもあります。
人口1万5000人のうち1割近い1300人あまりの方が死亡・行方不明となり、3700戸が全壊または半壊するという被害に見舞われました。
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私たちがこの大槌町を訪れたのは、震災から9カ月近く経った11月の末。本格的な雪の季節が訪れる直前のころでしたが、壊れた建造物の解体・撤去作業が終わるまでには、今しばらくかかるだろうという状態。とはいえ、少しずつプレハブの店舗も建ち始めており、復興が芽生える気配が感じられます。
その日私たちが向かったのは、少し山を上ったところにある小槌地区仮設住宅に隣接するエールサポートセンター。町が建設し、行政からの委託で医療法人あかね会が運営している施設です。
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チーム・レクルーとしてうかがったのは、盛岡市レクリエーション協会の相馬満枝さんと村上福導さん、そして岩手県レクリエーション協会事務局長の千葉久美子さん。センターに集まっていたのは、要支援1、2の方々ですが、皆さんとても元気な様子で、腕を使ったレクからスタートした相馬さんに、みるみる引き込まれていきます。
「じゃあ次は、片手を前に、もう一方を胸に。前に出した手はグー、胸の手はパーでやってみましょう。はいっ、よいしょー!」
うまくいかず失敗するたびに、おばあちゃんたちの朗らかな笑い声がわき起こります。
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見ていて気付いたのは、参加者のほとんどが女性なのですが、皆さんとても身なりをきれいにされていること。服装も髪型もきちんとしていて、お化粧をされている方もいます。実はこれには理由がありました。
「実は私たちは、来てくれた方々の写真を撮るようにしているんです」
そう語るのはエールサポートセンターの菊池多佳子さん。
「撮った写真は、帰りにプリントアウトして渡してあげるんですが、そうすると自然と、きれいにしなくちゃという気持ちになってくれるんです。『次は口紅っこつけてこよう』なんて(笑)」
写真を撮ることには、もう一つ理由があります。
「写真を撮るときは、『はい笑って、ピース!』と声をかけて、ピースサインをしてもらいます。そうすると、不思議と口角が上がって笑顔になれるんです」
確かに写真を撮ると、皆さん撮られなれているという感じで、さっと笑顔を浮かべてくれます。菊池さんたちの写真を撮るというアイディアが、笑顔のリハビリになっているのでしょう。
「それから、釜石のスーパーまでお連れするのも、皆さん楽しみにしています。100円ショップとか、買い物をしながら商品を見て歩く、というだけでも大切なレクリエーションなんです」
この日はこの後、タオルを使ったレクリエーションと、グループに分かれての「スキヤキ・ジャンケン」などを行いました。ベテランらしい巧みな話術の相馬さんと、元気でコミカルな村上さん。みなさん気さくに打ち解けて、おばあちゃんたちからも冗談が飛び出したりと大盛り上がり。帰るときには2人とも握手攻めにあって、まるでタレントのような扱い。「こんなに笑ったのは久しぶりだよ!」「感謝感激だよ!」と声がかかっていました。
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おしゃれをする、買い物をする、そして大きな声で笑う。そんな当たり前の「日常」を、被災された方々は、一つひとつ取り戻そうとしています。だからこそ今、笑いを生み出すレクリエーションが果たす役割は大きいのではないでしょうか。そんなことを実感した大槌町訪問でした。
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